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執筆者の写真上杉尚史

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こんにちは、上杉です。 先月に続きましてMIDIのお話しをしたいと思います。 ネットなどでは噂されている「MIDI2.0」。 なんだか凄いらしいとは聞くけど、まったく全貌がわからず・・・というかたも多いのではないでしょうか? それもそのはず、「MIDI2.0」に対応した製品が一般に出回っていないからなのです。 もちろん、「MIDI2.0 Ready」としていつでも対応可能ですよ!!! なんて製品もあるのですが、まだまだこれからというのが現状です。 とはいえ、「MIDI2.0」規格の発表はされており、メーカー各社も様々な開発をしているというのも事実でして、来年ぐらいからは対応製品が増えてくるのではないでしょうか? 今日は「MIDI2.0」と「MIDI1.0」との違い(その1)について話したいと思います。 若干専門的な話も出てきますが我慢して下さい。 まず「MIDI2.0」の概要ですが、日本でMIDIを管理する団体「音楽電子事業協会(通称AMEI)」のWEBからの抜粋では、 ~(冒頭略)MIDI 2.0規格は現行のMIDI 1.0規格の置き換えでは無く、MIDI 1.0機器との共存・共生を基に、さらに拡がっていくMIDIの世界を創るための規格である。 この世界を実現するために、MIDI 2.0規格は双方向通信による問い合わせの機構(MIDI機器間ネゴシエーションと呼ばれる)を前提に設計されている。 MIDI 2.0規格で追加される新しい機能は、規格書「MIDI機器間ネゴシエーション」によって定義されている。 双方向に接続されたMIDI機器間で互いに利用できる機能を問い合わせの上で実行する。 もし、接続先の機器が新しい機能に対応していなければ、その機能についてはMIDI 1.0の範囲で動作する。 このようにMIDI機器間ネゴシエーションを必須とすることで、MIDI 2.0規格はMIDI 1.0機器との後方互換性を担保している。~ と記載されており、この中でポイントとなるのは双方向通信とMIDI 1.0機器との後方互換性という部分です。 「MIDI1.0」ではMIDI OUTから鍵盤情報などを出力し、MIDI INで受け取るという方式ですが、「ちゃんと受け取りました・・・」ってメッセージは返さないことになっており、送った方は。 「ボールは投げたよ~、受け取ってね~、え、エラーしたの?そんなの知らん!下手くそ!!」 みたいな仕様でした。 これが2.0になると、 「メール送りました!受け取りましたら返信お願いいたします。」 「はい、確かに届いております、引き続きよろしくお願いいたします。」 的なやりとりとなります。 もちろんノート情報1音ずつに確認を入れるわけでは無く、お友達申請のように事前に「ご挨拶」が済めば、送りっぱなしも大丈夫です。 では、「MIDI1.0」の機器に「MIDI2.0」の機器を繋ぐとどうなるのでしょうか? 今後出てくる「MIDI2.0」機器は基本的に「MIDI1.0」の仕様を内包しているので、「MIDI2.0」機器が「MIDI1.0」機器としてやりとりを行います。 ただ、「MIDI2.0」機器特有の機能(例えばベロシティーの高解像度化)もあるので、これらを活かすには「MIDI2.0」機器同士でやりとりする必要があります。 実は「MIDI2.0」の前に「MIDI-CI(Capability Inquiry)」というのがあり、これを使って相手が「MIDI2.0」対応なのか否かを判断します。 「MIDI-CI」は従来のMIDI規格の中にある「ユニバーサルシステムエクスクルーシブ」というメッセージを使用します。 例えばA機器とB機器をUSBで接続して従来のMIDI通信ができる状態にあったとして、A機器からMIDI-CIを使って「おたく、MIDI2.0いけます???」とメッセージを送ると、

「イケまっせ!」と返してくるイメージです。 このやりとりが終わると、次から「MIDI2.0」でのやりとりが始まります。 もし、既読スルー状態のときはそのまま1.0で通信することになります。(もちろん「ダメですー」ってレスポンスが返る場合もあります) しかし、「MIDI2.0」になったからと言って、すべての「MIDI2.0」機能にすべての機器が対応できるかというとそうではありません。 もともと「MIDI-CI」は相手機器がどのようなメッセージや機能に、どう対応しているのかを照会する機能ですので、数あるMIDI機能のうち一部しか対応していない「MIDI2.0」機器も存在することになります。 ちなみに「MIDI2.0プロトコル」と呼ばれる新しいMIDIの通信手段はUMP(Universal MIDI Packet)というものを使うのですが、この取り決めの中には「MIDI1.0」のメッセージをそのまま格納(8ビットのメッセージのことです)できるように設計されています。 ということは「MIDI2.0プロトコル」を使える「MIDI1.0」の挙動をする「MIDI2.0」機器、という何とも微妙な製品も作れます。 おそらくPCと接続する場合、「MIDI2.0プロトコル」の実現はUSB-MIDIドライバのグレードアップということになると思うので、上記の商品はすぐに出てくるかもしれないですね。 皆さんが「MIDI2.0」の本格的な恩恵を受けるのは、DAWソフトウェアが「MIDI2.0」対応になったときでしょう。 しかし、前回紹介したノートアトリビュートなどは、例えばCubaseではノートエクスプレッション表示に統合できるかもしれないですが、ほかのDAWでは対応する表記がありません。 イベントリストにもどう表示するのかなど、折角機能が増えてもDAWごとに捉え方が変わってしまうと使いにくいですよね? このあたりはメーカー各社頭を悩ましながら日々開発に取り組んでいるようですので、我々はその動向を見守りましょう。 ちょっと長くなりましたが「MIDI2.0」と「MIDI1.0」との違い(その1)について触れました。 次回はもう少し細かいところに入ろうかと思います。

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