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執筆者の写真角谷仁宣

2021_0219

「ウォール オブ サウンドについて」


先日、プロデューサーのフィル スペクターさんが81歳でお亡くなりになりました。謹んでお悔やみ申し上げます。


フィルの第一歩は本人が作ったバンド テディベアーズでの活動で作詞作曲、プロデュースした”To know him is to love him”は’58全米No.1ヒットに輝いております。

その後、テディベアーズが解散するとベンEキングの”Spanish Harlem”に作曲で参加したりしながらフィルはプロデューサーとして活動を始めます。

‘61にレーベル フィレスレコードを設立し理想の音創りに邁進、多数のミュージシャンを納得行くまで長時間拘束していたらしいです。

そして完成したのが「ウォール オブ サウンド」と呼ばれる圧倒的な厚みがあってエコーが印象的な音像です。


代表的な曲はロネッツの”Be My Baby”でドン ドドン タンと云うイントロのドラムは「ウォール オブ サウンド」の代名詞みたいな印象があります。

フィレスのレコーディングではギター3,4本、キーボード2,3台、各種パーカッション、ホーン(トランペット、サックス、トロンボーン)各2人ずつ、ドラム、ストリングスの様な大編成が通常だった様です。

その頃のフィルはステレオが好きでは無くモノラルに拘っていたそうです。


60年代は未だ世の中にステレオ盤が出始めた頃で製作側もどうやって扱えば良いのか試行錯誤していました。ビートルズ等もモノラル盤に力を入れていてステレオ化するのにパートを左右に振り分けたりしていました。

ビートルズといえばフィルはお蔵入りしそうだった”Get Back Session”をジョンとジョージの依頼で見事にまとめ上げ”Let It Be”を完成させました。

ポールはフィルが”The Long and Winding Road”にストリングスやコーラスをオーバーダビングしたものが本人の曲イメージと違っていたらしく気に入っていなかったらしいです。

その後もフィルはジョンやジョージのレコーディングに参加し名盤の作製に寄与しています。


更にその後フィルはジョンやラモーンズのメンバーに銃を突きつけたり出来が気に入らなかったマスターテープを持ち逃げしたり麻薬を常習するなどの奇行が目立つようになります。

そしてレコーディングに参加する機会も少なくなりました。’03 には自宅で女優のラナ・クラークソンを射殺した容疑で逮捕されました。

一度保釈されましたが、’09に有罪の評決を受け禁錮19年の判決で刑務所の薬物中毒治療施設に収監されていました。

‘21/1/16新型コロナウィルスによる合併症により刑務所から移送された先の病院で死去しました。


フィルスペクターの主なフィレス時代の作品は

Box Set “BACK TO MONO (1958-1969)”

で聴けます。


影響を受けたアーティストは枚挙にいとまがありませんが何作品か挙げてみます。

ブルース スプリングスティーン

“Hungry Hart”

エレクトリック ライト オーケストラ

“Confusion “

ビーチ ボーイズ

“Don’t Worry Baby”

アラン パーソンズ プロジェクト

“Don’t Answer Me”

エルビス コステロ

“No Dancing”

ビリー ジョエル

“Say Goodbye to Hollywood”


日本でも大瀧詠一さんの

“A Long Vacation“

のレコーディングは伝説です。

ギター、ピアノ、パーカッションそれぞれ多数同時に鳴らすフィル スペクターのレコーディングのやり方を踏襲しつつかつ見事にステレオで纏めております。

佐野元春さんの”SOMEDAY”

もスペクターサウンドだと思います。

私が参加したサザンオールスターズの

”クリスマス ラブ(涙のあとには白い雪が降る)”

も目指すイメージはスペクターサウンドでした。


今時スペクターの様なレコーディングは

スタジオ+大人数+長時間等なかなかやりたくても出来ませんが憧れです。

昨今スタジオに行かなくてもデータのやり取りで済んでしまう事が多くなりましたので尚更です。


JSPA 監事 角谷 仁宣


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