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  • 執筆者の写真渡部 潤一

2021_0312

「シンセで作るシネマティックサウンド」


皆さんは映画音楽と聞いてどんなジャンルを思い浮かべますでしょうか?

大半の方々は重厚なオーケストレーションを想像されると思います。

脈々と受け継がれてきた映画音楽、それに加えてシンセが台頭してきます。


シンセがフィーチャーされた映画の代表は「未知との遭遇」の劇中、

異星人と音声で会話をするというシーンが印象的ですよね。


そして80年代SF映画を語る上では外せない「ブレードランナー」ではヴァンゲリスが

YAMAHA CS-80をメインにサウンドトラックを表現しています。


それから時間が経ってオーケストラを使わない映画が次々と発表されてきました。


ダニー・ボイル監督作品「トレインスポッティング」ではクラブミュージックを代々的に取り入れ、

映画のスタイリッシュさを助長させるためのエッセンスとして音楽を扱い、

ダーレン・アロノフスキー監督作品「π」ではシンセで合成されたインダストリアルノイズが作中で鳴り響いています。


このように、昨今の映画音楽ではオーケストラ、シンセ、民族楽器といったバリエーション豊かなサウンドで構成されており、

多岐にわたる表現方法を日進月歩、模索しながら進化を遂げています。


では、シンセで作るシネマティックサウンドはどのように作られているのか?


シンセで作ると言っても色んな表現がありますよね。


ドローンサウンドで環境音を表現したり、SE1発で扱われたり、一概には言えませんが、

シンセならではの音作りを一例、ご紹介致します。


例えば、人々が混乱をしているシーンがあったとします。


オーケストラで言うと全楽器がカオティックな演奏で表現されるかと思いますが、

シンセの場合、ここで重要な機能が発揮されます。


その機能は「マトリックス・モジュレーション」です。


これぞ王道!といったシンセの場合、リード、ベース、パッドといった所謂「楽器」として扱われますが、

マトリックス・モジュレーションを搭載したシンセの場合、ありとあらゆるパラメータを変調することができます。


例えば、ピッチをランダムに揺らしたい場合、モジュレーションの元となるLFOに別系統のLFOやエンベロープをかけ

ピッチの揺れをランダマイズをさせたり、パンポットLRを不規則に振ることもできます。

エフェクター内蔵型のシンセでは、不規則、突発的ににディストーションをかけたり、

ディレイタイムを伸ばしたり縮めることによってノイジーさが加わったりと、

更に柔軟な音作りを可能にします。

ステップシーケンサが内蔵されている機種の場合も、シーケンスのBPMを変えたりする事もできたりと、

さらに複雑な音色を得ることができます。


上記は「モジュレーションできないパラメータはない!」といったシンセの場合ですが、

しかし、そうではないシンセも多数あり、合成方式によって変わってきます。


ソフトシンセはCPUならではの演算により様々なパラメータを変調することができ、

ある意味でハードウェアを超えるモジュレーションを得ることができます。


そしてハードウェアのモジュラーシンセでは、

LFOやエンベロープモジュールを実質上、無限に拡張することができます。


このように、

・ハードウェア内蔵型

・モジュレーション機能が豊富なソフトシンセ

・モジュールを拡張できるモジュラーシンセ


といった、多様なシンセでシネマティックなサウンドを得ることができます。


さらに、合成方法としてグラニュラーシンセシスを持ったシンセの場合、生音をソースにして

複雑かつランダムなサウンドを作り出すこともできます。


「モジュレーション・マトリックスって何に使えば良いのか分からない!」

といった方々も、最初は「変な音」を作るところから初めてみて、

やがて音が複雑に入り交じるサウンドスケープなサウンドを生成することができるでしょう。


映画音楽におけるシンセの存在意義、それは「変調に全てを委ねる」

こうお伝えしても過言ではありません。

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